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「先生、今年中にもう1回、模擬試験を受けられますか?」キッズドアの現場から
こんにちは。キッズドアでは、ひとり親家庭や多子家庭、生活困窮過程など、経済的理由で塾などに通えない中学3年生を対象に、東京の中央区と杉並区で無料高校受験対策講座「タダゼミ」を開催しています。
「先生、今年中にもう1回、模擬試験を受けられますか?」
夏休み明けの学習会で、生徒に聞かれました。
「受けられるよ。11月にみんなに2回目の模擬試験を受けてもらう予定だよ。」
そう答えると、その生徒は「良かった、がんばります。」と安心して帰りました。
部活に定期テスト、学校行事と、受験勉強以外にもやることが盛りだくさんの生徒たちにとって、模擬試験は受験勉強にエンジンをかける良い機会です。本番に近い形式で試験を受け、志望校の合格判定が出ます。この結果をもとに、生徒と今後の対策を立てます。
しかし、模擬試験にはお金がかかります。キッズドアで申し込むと少し安くなりますが、それでも1回3900円。「親にお金を出してもらうのは申し訳ない」と模擬試験を受けたがらない生徒もいます。
タダゼミでは必要な時期にきちんと模擬試験を受けて欲しいと、寄付を集め、年2回模擬試験を無料で受験できるようにしています。
8月には27人が受験し、合格判定に一喜一憂しながら、気持ちも新たに勉強しています。
生徒のニーズを把握するために9月に行ったアンケートからは、私たちが無償で提供している教材が生徒にとって、とても重要であることがわかりました。受験勉強は、「タダゼミ」で配布している教材に頼っているという結果でした。
受験勉強のためには、受験用の問題集や参考書が必要ですが、塾に行かず、経済的にも厳しい家庭では、自分で教材を購入しないのです。勉強が苦手なので、どの教材を選んでいいかもわかりません。タダゼミでは一人一人の生徒のレベルに合わせて、テキストを用意し、無償で提供していますが、それがとても大切だと改めて感じています。
新年度の説明会や、3月に行う修了式で、私たちは「タダゼミ」の生徒や保護者に「みなさんはたくさんの人たちから応援されています」と伝えています。それを伝えることで、ぜひ生徒に社会との繋がりを感じて欲しい、孤立しないで欲しいと思っています。
Pay forward(ペイ・フォワード/恩送り)という言葉があります。
「タダゼミ」で支援を受けた生徒たちが、将来、それぞれの方法で社会貢献をする、そんな大人になって欲しいという願いを込めています。
受験生はいよいよ本格的な受験シーズン開始です。
3月の修了式に子どもたちがどんな顔をしているか、今からとても楽しみにしています。