スタッフレポート
不登校
子どもの育む力 新しい世界の広がり 苦しみと喜び、悩みと学び
2021年度の新入職員C.Tと申します。
私が担当している事業は、東京都足立区にある不登校児童生徒への居場所型学習会「キッズポートやざいけ」と、同区内の中学生を対象とした居場所型学習会「キッズリビングやざいけ」です。同じ会場で、午前と午後で活動内容を変えています。現在私は「キッズポートやざいけ」をメインに関わり、対象となる子どもは小学生高学年から中学生となっています。
不登校児童生徒への居場所支援を希望する子どもが今年の夏休み明けから急に増えて、あっという間に定員20人に達し、紹介のご連絡を頂いてもお断りをしている状態です。不登校の理由はそれぞれの事情があるので、一概には言えませんが、「キッズポートやざいけ」には中学3年生の子どもが多く来ています。進学について考える時期ですので、子どもたちも将来のことを考え、学校とは違う社会との繋がりがある場所を求めているように感じます。初めて来るときは緊張をしていて、私たちにもひしひしと伝わってきます。目が合わなかったり、か細い声しか出てこなかったり、連れて来られて気持ちがふさぎ込んでいる子どももいます。
不登校の子どもが新たにどこかに行くということは、大変大きな意味があると思います。「キッズポートやざいけ」に来た時にはすごく勇気を必要としただろうし、気持ちがついてこれなかったり、悩んだりしたんだろうなと推測し、来ただけでも大きな成功のひとつと捉えています。
そういったこともあり、アルバイトスタッフと文字情報以外の子どもの背景を想像し、子どもとどのように関わったらいいのか考えるようにしています。アルバイトスタッフから相談されることもたくさんありますし、私から相談することもあります。そのため随時ミーティングを行い、スタッフ間で子どもへの対応に相違がないようにコミュニケーションをとるようにしています。
子どもと関係性が築けてくると、「ずっと家にいると話す人が限られていて、実はその他の誰かとも話したかった」という声を聞くことがあります。その声を子どもたちは聞いてほしかったのだろうと思いますし、誰にも言えなかった苦しさやこれまでの辛い体験、さまざまな思いや気持ちがあったんだろうと感じます。
私自身も10代の頃、さまざまな悩みを抱えていました。
今思えば些細なことでも、当時はいろいろな思いを抱えて悩んでいることが多くありました。そういう時に家族や友達、近所の人、先生などに自分の気持ちを話し、気もちを受け止めてもらえたことで、こころが軽くなりました。
その支えは、自分のアイデンティティを形成する時期でもある子どもの時期にはとても大切だと気づきました。人とつながり、自分の気持ちを話すこと、相手の考えを聞くことで自分自身を整理することができ、前向きになる気持ちが芽生えていきました。
この経験は私にとってとても重要で、私だけではなく他者も悩み、その悩みや気持ちを安心して話せる関係づくりが大切だと思い、大学で心理学を専攻しました。大学院まで進み心理学を学び、私自身の経験から、一人でも多くの子どもに心があたたかくなるような支援があるといいなと思いました。私のように悩みを抱えていても、人とのかかわりが薄く、支援もなく一人で苦しんでいる子どもがいることを知り、そこに関わりたいと仕事を探しました。
一般企業に就職することもひと時考えましたが、子どもというキーワード、子どもと関わることへの情熱はなくなりませんでした。東京都足立区でスクールカウンセラーをしている時に、キッズドアと出会い、私が子どもたちに提供したい学校でも家でもない第三の居場所の支援をしていて、「まさにこれだ!」と思い、キッズドアに入職しました。
子どもたちは一人ひとり自分で成長する力を持っている、と私は強く思っています。その成長するための環境づくり、場づくりを意識しています。成長と言うと大きなことを想像するかもしれませんが、日々の中にあるちょっとした変化も成長の一つです。その変化を見失わないようにしています。例えば、子ども自ら遊びに誘っていたり、昼食の配膳をしたり、居場所で一緒にお菓子づくりをしたりなど大人が見て些細なことでも子どもからすると勇気がいることであったりします。そのちょっとした変化が今後に影響していくと思っています。
仕事で心がけていることは、子どもが「キッズポートやざいけに来てもいいかな」と思える空間作りです。外出に強い抵抗感を持っていたり、自信がなかったり、他者の目線を過剰に気にしたり、傷つきやすかったり、漠然とした不安を抱えたりと目に見えないそれぞれの課題があります。
そのため子ども一人ひとりに合わせたスモールステップを重視しています。子どものペースに合わせ、まずは取り組みやすい簡単な目標を作れるよう時間をかけて一緒に考えていくようにしています。子どもにも様々なバックグラウンドがあります。これまでの経験や日常生活、習慣から今があるので、私個人の価値観で考えず、子どもの気持ちを第一に、良い意味で過剰な期待をしないよう、理想を高くしないようにしています。目標が出来なくても、子どもの気持ちを汲み、今ある存在に目を向けています。子ども自身、周りからの声で傷ついているので、そのときに自分の感情に振り回されず、子どもの気持ちに寄り添うようにしています。
子どもがどのように思っているのか子どもの声を聞いて、「こうしよう」というのではなく、「できるようになるには何が必要かな」と、子どもが主体的に考えられるよう背中を押すような声かけをしています。
今後は、子どもたちに様々な体験をしてもらいたいなと思います。子どもは限りない可能性を秘めています。子ども自身さえも私たち大人も気づけない光り輝く何かを持っていると思います。それがなにかはわかりませんけど、その可能性を広げるためにいろいろな体験が必要だと思います。貴重な体験をすることも重要ですが、目を見張るような大きなことでなくても子ども同士が一緒にボードゲームをしてワイワイ楽しくすることも一つの体験だと思います。一緒に楽しみ、人とつながることの喜びを感じることも大事なことです。そのような積み重ねから自分を見つめ直し、新たな挑戦へと自ら進んでほしいです。
今現在は、中学3年生と関わることが多いため、進路に悩む子どもの声を聞き、将来につながる支援が出来ればと考えています。子どもと過ごす日々は私自身いろいろな発見、学びがあります。楽しいことだけではありませんが、子ども一人ひとりが輝けるような支援、視野を広げ、目に見えない大事なこと、心の声を聴くように心掛けています。アルバイトやボランティアさんなどのスタッフや外部機関などと連携を強め、子どもの可能性を広げていきたいと思います。
C.T
東京都足立区の不登校児童生徒への居場所型学習会、同区内中学生の居場所型学習会を担当
キッズドアスタッフ歴
8か月(2021年12月時点)
得意科目
社会
最近のうれしかったエピソード
自転車を買い、休みの日に散策できる範囲が増えたこと