インタビュー
子どもの貧困
子どもだけではなく若者への支援を本格的にスタート
みんなが語るキッズドア - キッズドア・ヤングサポート –
これまでキッズドアでは高校卒業後の若者を支援の対象としていませんでした。しかしながら、経済的に厳しい家庭出身の若者たちは、支援を必要としていないのではありません。大学や専門学校に進学しても親からの仕送りを期待できず奨学金のみでは足りないため、常に学費や生活費の工面に追われていることが多く、そのために様々な悩みを抱えています。こうした現実を目の当たりにし、キッズドアはこれまでリーチできていなかった経済的に苦しく、孤独・孤立に悩む18歳から29歳までの若者を対象とする「ヤングサポート事業」を2023年10月に開始しました。
「ヤングサポート事業」では、このような困窮する若者に繋がり、必要な物資を支援し適切な情報を伝え相談に応じることで、大学中退や心身の健康を損なうことを防ぐことが可能となります。必要な食料や物資の他、奨学金情報・アルバイト情報の提供、専用の相談窓口を通じて支援が受けられること、一人ではないことを伝え精神面のサポートも行っています。
サポートを始めた経緯や具体的にどのようなサポートをしているのか担当者に聞いてみました。
-ヤングサポートを開始する際に社会的な課題はどのようなものがあったのでしょうか。
これまでキッズドアは、小学生から高校生までの子どもを支援してきました。しかし、高校を卒業して無事大学進学が決まっている若者も、親からの仕送りは当てにできないため、『奨学金とアルバイトだけでやっていけるだろうか』と不安を抱えているケースを多く見てきました。アルバイトを複数掛け持ちした結果、成績は悪化、奨学金受給の条件を満たせなくなり退学してしまったというケースも見てきました。こういう状態に陥る前に、経済的支援等を得る手段やそういう情報の探し方をアドバイスできたら退学は避けられたのではないか、と残念に思います。
経済的な困窮の他、DVで悩んでいる、人との付き合いが苦手で仕事がうまくいかない、予期せぬ妊娠をしてしまった等さまざまな悩みを抱える若者が多くいます。2023年秋、日本民間公益活動連携機構(JANPIA)の助成によりキッズドア内に18歳から29歳までの若者を支援する体制を整えることができ、「ヤングサポート事業」を開始しました。
-サポートを受けている若者について教えてください。
男女比は、男性約30%、女性約70%となっています。属性は、学生約70%、会社員13%、20%弱がアルバイト、パート、無職等です。居住地は全国に広がっており、暮らし向きは、「苦しい」を51%、「大変苦しい」は26%の人が回答し、4人に3人が経済的に苦しいと答えています。
過去1年間に、経済的理由で支払いができなかった項目として、「食品」を45%の人が挙げています。また現在の悩み事としては、学生、社会人とも「お金」が最も多く、90%がこれを挙げています。心理的ストレス(平均値)は、全国民を対象とする国民生活基礎調査で出た数値よりも高いという結果でした。
-サポートを受けて、若者の反応はどうでしたでしょうか。
支援は、食料等を送る「物資支援」、いろいろなお困り事へのアドバイスや相談先を紹介する「情報支援」、更に「情報支援」では解決が見当たらないという人のために個別にLINEでの相談に応じる「相談支援」を用意しています。これら支援は全て無料です。
登録者から以下のようなコメントを頂いています。
- 経済的に困っていることが、まわりの友達になるべく知られたくない。だから、このような(食料を)、郵送などしていただけるのはとても助かる。
- 持病の治療でかなりお金を使わざるをえない状況のため、食糧の支援はとても助かります。よろしくお願いします!
- 奨学金一覧がまとめてあったのがありがたかったです。条件付きで自分の受けたい奨学金を探せたのも非常に助かりました。
- 自分からとりにいけない情報を貰えるので、新しく調べるきっかけになるのが助かっています。
- 比較的イレギュラーな相談でも親身になってくれた点が良かったです。悩みを抱え込みきれなくなってきて連絡しましたが、相談先の提案や心理士さんまで、想像以上にやってくれたことが嬉しかったです。
-サポートを開始して新しい発見はありましたか。
「食料支援」では、自炊の習慣がある人ばかりではないと考え、カップ麺を数種類送ったのですが、送付後に「カップ麺が多すぎる」という声を複数いただきました。
「情報支援」では、毎回1つのテーマについてについて専門家にお話を聞くオンラインセミナーを行っており、これまで6回実施しました。テーマは、『ブラックバイト・闇バイト』、『お金に困らない人生のために知っておくこと』、『ワーキングホリデー』、『メンタルケア』等多岐にわたり、若者に関心が高いと思われる事象を選んだつもりなのですが、残念ながら毎回参加は少人数です。参加後のアンケートでは「良かった」という声が多く、参加者の満足度は高いのですが…。
われわれも、若者支援ははじめての取組みであるため、まだまだ試行錯誤している部分もあります。どういう支援が求められているのか、若者の声に耳を傾けて、より役に立つ支援にしていきたいと考えています。
-今後、どのように進めていこうなど展望はありますか。
18歳以上を支援する国や自治体等の制度や支援は少ない、という事実があります。「ヤングサポート」の登録者からも想定していた以上に、「いろいろな制度があっても18歳以上は対象外なので(「ヤングサポート」は)助かる」という声を聞きました。
- 色々給付や支援がある中いつも18歳以上の学生は支援から外されてしまいます。
- 学生のことを支援していただき本当にありがとうございます。たくさんの学生が救われたと思います。
- 自分の年代に向けてのサービスがあり、とても嬉しいです。安心して社会人生活を始められるよう貴サービスを活用できたらと思います
- 本当に困窮している人は支援をもらえるけれど、自分のように微妙に収入はあって親からの援助が少なくて生活費に収入のほとんどが費やされる人向けの支援を増やしてほしいです。
との声がありました。
社会に出る前や社会人として基盤を作る前に、いろいろな困難がありそれが解決できなかった場合、その後の人生において影響や損失は大きいものと思われます。対策としての一例ですが、大学生活を全うするためには給付型の奨学金の拡充は有効な施策の1つになるでしょう。困窮する若者層への制度や支援の必要性について、今後も社会課題として訴えていきたいと思います。