スタッフレポート
子どもの貧困
体験格差・IT格差
IT格差の改善だけでなく、人として成長する機会も提供できた
今年は関東と東北の2会場で約100名の女子高校生が参加
私は、企業や法人と連携して実施するキャリア教育イベントの企画運営に携わっています。今年度担当したイベントは、女子高校生を対象としたデザイン&IT体験プログラム「IFUTO(イフト)」です。
このプログラムは、女子高校生を対象に、親しみやすいファッションを題材にして楽しみながらITを学び、創造力を養うことを目的としています。多くの女子高校生はITに苦手意識を持ちやすく、特に男女混合の学習環境では参加しづらいと感じる傾向があります。そのため、女子生徒のみを対象とすることで、より安心して参加できるようにしました。また、特に困窮世帯の子ども達はITに触れる機会が少ないため、優先的に参加できるよう配慮しています。
これまで関東近郊の生徒を対象に過去2回実施してきた「IFUTO」ですが、今年度は新たな試みとして、関東と東北の2会場で実施しました。また、生徒達が目的や興味関心によって選択できる
- Tシャツのデザインを作成するコース
- デザインを作成しTシャツプリントするコース
- 作成したデザインをメタバース空間で再現するコース
という3種類のコースを設けました。その結果、両会場合わせて約100名の生徒が参加し、充実した時間を過ごすことができました。
格差があっても、ITに触れる機会を提供できれば第一歩を踏み出せる
参加者のうち、6割以上が困窮世帯やひとり親世帯であり、ほとんどの生徒が自宅にパソコンを持っていない、もしくは親のパソコンはあるが自由に使えるパソコンはないため、学校以外でパソコンに触れる機会がほとんどない、IT格差がある状況です。
事前のアンケートでは、「パソコンを触ったことがほとんどなく不安」「そもそも自分が参加していいのか分からない」という声もありましたが、プログラムが始まると、参加者達はデザインソフトを使いこなし、驚くほど完成度の高いデザインを作り上げていました。
事後のアンケートでは、「Adobe※を使うのが意外と簡単で、機械が苦手な私でもできることがわかりました」「パソコンは使い方を理解できれば、怖いものではないことに気づけた」といった声が多く寄せられ、やってみれば案外出来るものだと不安を払拭し、ITへの第一歩を踏み出せたようです。※アドビ(デザインソフトの名称)
人として成長する機会を提供することにこそ、キッズドアが関わる意義がある
一方、デザインやパソコンについて触れる感想が多い中で、「成長できた」と、次のような声を寄せてくれた生徒もいました。
私はこれまで、自分の意見に自信が持てなくて、みんなの前で発表することができませんでした。しかし、今回のIFUTOでは、少しずつみんなと仲良くなる中で相手の性格が分かり、みんなで共通の課題に取り組みながら相談して考えることができました。みんなが同じ体験をしているので、誰かの意見を否定することもなく、自然と自信がついて発表することが少しだけ怖くなくなりました。
(高校1年生 Kさん)
この言葉を読んだとき、改めて「IFUTO」の存在意義を強く感じました。
私は、子ども達がデザインやITを学ぶだけでなく、このプログラムを通じてコミュニケーション力や考えを伝える力を養い、人として成長してもらうことを願っています。その機会を提供することにこそキッズドアが関わる意義があると考えています。
今の自分のポジションで、子ども達のために何ができるのか
一般的に困窮世帯やひとり親世帯の子ども達は自己肯定感が低く、一歩を踏み出す勇気が持てないことが多いと言われています。私が昨年度まで担当していた学習会にも、自己肯定感の低さからやりたいことがあっても一歩踏み込んでチャレンジすることが出来ない生徒がいました。
こうした子ども達が学校以外の場で新たに出会い、お互いに刺激を受けながら自己肯定感を高めることは、今後社会に出ていくうえで非常に重要だと思います。
今回のイベントを通じて、デザインやITの専門性だけでなく、自己成長を実感できた子ども達がいたことは、これまでキッズドアが培ってきたノウハウが活かされた結果の表れだと感じています。
私は、支援の最前線の現場である学習会の担当から離れましたが、別の角度から子ども達を支援できていると感じられるイベントでした。
今後も、私はキッズドアの一職員として、今の自分のポジションで、子ども達のために何ができるのかを常に考えながら活動していきたいと思います。
K.R
2023年入職。仙台の学習会担当を経て、現在は、「IFUTO」など企業と連携するキャリア教育イベントの企画運営を担当。高校時代の得意教科は数学。