スタッフレポート
外国ルーツの子ども
おじい様から届いた喜びの手紙
2024年度も年度末が近づき、キッズドア東北にも進路決定の嬉しいお知らせが届き始めています。外国にルーツを持つA君も、この春、就職が決まったひとり。A君のおじい様から、喜びのお手紙が届きましたので抜粋してご紹介いたします。
※プライバシー保護のため一部加工・編集しています。また、読みやすくするため一部文章の体裁を整えて要約しています。

私はキッズドア東北の高校生教室でご支援、ご指導をいただいているAの祖父です。
Aは18歳(になる年)まで海外で生活していましたが、父親が他界したため日本に帰国しました。それまでは、英語を含む3カ国のみの学習だったので、日本語の読み書きができませんでした。帰国時は17歳だったので公的な支援がなく、帰国子女として編入の受け入れもしてもらえませんでした。そんな中、キッズドアを紹介されました。スタッフの皆さんのサポートにより、日本語学習も進歩し、3年遅れでようやく公立高校に入学できました。
Aの母親は家族の介護のため働くことができず、生活も厳しい状況でしたが、キッズドアから食料品等のご支援を賜り本当に助かりました。
そして、この春、高校を卒業する予定です。先月、地元の会社からエンジニアとして内定をいただきました。心から感謝申し上げます。
A君のお父様が亡くなったのは、A君が日本に帰国する約4年前のことでした。お父様の死後も、A君は当時在籍していた現地の学校に通い続けるためそのまま在留し、親戚の家に下宿していました。一方、A君の妹さんは先に日本に帰国し、公立中学校に編入することができました。
しかし、A君が17歳の時、住んでいた国の永住権が切れてしまうことが分かり、卒業目前だった学校を急きょ退学し、2020年12月に日本へ帰国せざるを得ませんでした。
帰国後、おじい様は教育委員会に相談したり、関係各所に問い合わせをしたりと、A君の進学先を探して奔走されました。しかし、海外で取得した単位は日本で認められず、日本の高校へは編入できないという結果に。一般の子と同じように、高校入試を受けるしかないという結論が出たようです。
すでにその年の3月の入試には間に合わなかったため、A君は翌年の受験を目指すことになりました。2021年4月、おじい様がキッズドア東北に相談に来られたのが、支援のはじまりでした。
そこから、A君の日本語学習と高校受験の勉強がスタート。A君は、他団体の日本語学習支援も活用しながら、自宅での学習にも取り組みました。1年間の努力の末、高校に入学することができました。
しかし、その後も様々な試練が続きました。見た目からは日本語が苦手だと分かりにくいため、文化の違いから誤解を受けることがありました。また、同じ境遇の悩みを共有できる仲間が不在であるという孤独感もあったように思います。さらに、学校の授業を苦手な日本語で受けなければならないことも、大きな困難のひとつでした。授業内容の理解に苦労し、宿題や連絡事項を聞き逃さないことも人一倍の努力が必要でした。
この半年間、キッズドア東北はA君の就職活動も支援しました。最初は「残業」や「初任給」といった基本的なビジネス用語の学習から、面接練習までサポートしました。そして先月、地元の企業からエンジニア職として内定を獲得することができました。
通常より3年遅れで高校を卒業するA君。先に帰国して日本の中学校に編入できた妹さんは、A君より先に高校を卒業して、すでに大学に進学しています。同じ家庭の子どもでも、帰国時の年齢によって、行政の支援を受けられるかどうかに大きな差が生じる現実も存在しています。
A君のように、支援の網からこぼれ落ちてしまう子ども達は、今も日本にたくさんいます。みなさんのご支援が、行政の対応が難しい人生の岐路に立つ子ども個々のニーズに応える大きな力となっています。
- 外国ルーツの子どもの社会課題について
https://kidsdoor.net/issue/foreigner.html - キッズドア東北 ウェブサイト
https://kidsdoor-tohoku.net/
Staff Profile
Y.T
東日本大震災の起きた東北で、子ども達の学習支援事業、様々な体験事業を企画・実施。スタッフ歴
10年(2015年入職)最近のうれしかったエピソード
卒業した高校生の海外留学が決まったり、就職・転勤したボランティアがまた顔を出しに来てくれたこと。