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奨学金の必要性と返済負担の重さ ~社会的支援を今考えたい~ キッズドア調査室マンスリーレポート Vol.6
現在、大学等(短大、専門学校等を含む)への進学率は8割を超え、多くの子どもが高等教育へ進学しています。しかし、ひとり親家庭や社会的養護下にある子どもたちの進学率は、全体平均から大きく下回っているのが現状です
令和3年時点の統計では、全世帯平均の進学率が83.8%であるのに対し、ひとり親世帯では65.3%と約20ポイント低くなっています。さらに、生活保護家庭や児童養護施設で暮らす子どもたちの進学率は、全体平均に対して半分以下になっています。
背景には、大学の授業料の他、入学金や、受験に係る費用負担が重いことが、大学等への進学をあきらめる要因になっています。キッズドアがゴールドマン・サックス大学受験給付型奨学金受給生に対して行った調査では、29%が「受験・進学をあきらめようと考えたことがある」と回答しています。
大学等進学率の推移

*全世帯のデータは文部科学省「学校基本調査」、その他データはこども家庭庁「こども・若者、子育て家庭を取り巻く状況について」よりキッズドア作成。
経済的理由による進学への影響(複数回答)

*キッズドア「ゴールドマン・サックス大学受験給付型奨学金 受給生アンケート」より。
こうした状況の中で、奨学金は、困窮家庭の受験料や入学金、生活費など進学に伴う大きな経済的負担を軽減し、経済的な理由による進学断念を防ぐセーフティネットとして重要な役割を果たしています。下記のグラフを見ると、大学生の奨学金受給率は平均55%ですが、家庭収入が300万円未満の場合、受給率は8割を超えています。
家庭の年間収入別 奨学金受給《大学学部(昼間部)》

*独立行政法人日本学生支援機構「令和4年度学生生活調査報告」をもとにキッズドア作成。
実際、奨学金を受けた家庭からは、奨学金が受験の大きな後押しになったという声が多く聞かれています。
受給生の声
母子家庭に生まれた私にとって、大学は無縁なものだと感じていました。兄弟は皆、進学していたけど私だけはそうはいかないと考えていました。ですが、奨学金を使えば大学にも行けることを親から教えてもらい、未来への期待が生まれました。こうして支援がなければ大学への道は厳しいものになっていたと思います。
受給生の保護者の声
入学金や授業料などお金の不安があり、子どもの進学を諦めようと考えた時期がありましたが、奨学金のおかげでもう一度頑張ろうとやる気に繋がり、大学進学することができました。夢をあきらめないで良かったと本人から聞けた時、私も本当に嬉しかったです。希望を持たせていただきありがとうございました!
*キッズドア2026年5月「ゴールドマン・サックス大学受験給付型奨学金受給生アンケート 受給生編・保護者編」より
しかし、奨学金を利用して大学へ進学し、無事に社会へ巣立った後には、返済という新たな課題が待っています。JASSO(独立行政法人日本学生支援機構)の2026年データによると、奨学金の平均借入額は323万円、平均返済期間は15年に及びます。卒業後も長期間にわたって返済負担が続き、家計を圧迫する要因となっています。低金利時代も終わった今、奨学金の利子負担も重くのしかかることが懸念されます。
中央労福協調査(2022年「奨学金や教育費負担に関するアンケート」)によると、年収が低いほど返済の負担感が高く、200万円未満では69.3%、200万円台も55.2%が「苦しい」と回答しています。奨学金返済が生活に及ぼす影響についても、「結婚に影響がある」という回答が37.5%(3人に1人以上)、「貯蓄に影響がある」が65.6%(ほぼ3人に2人)となっており、生活設計への影響は大きいと言えます。
奨学金返済による生活設計への影響 <影響している>の比率・時系列

*中央労福協調査 2022年「奨学金や教育費負担に関するアンケート」をもとにキッズドア作成。
このように若者の奨学金返還負担が社会的課題となっていますが、その負担軽減を後押しする制度として近年注目されているのが、企業等による奨学金返還支援です。「企業等による奨学金の代理返還制度」(2021年開始)は、企業や地方自治体が奨学金を利用した社員・職員に代わってJASSOへ返還金の一部または全額を支払う仕組みです。この制度は、返還者の経済的負担を軽減するだけでなく、企業等にとっては人材確保や人材定着を促進する効果も期待されています。制度の利用件数は年々増加しており、2026年3月時点では約5,000社が参加し、2万6,000人を超える返還者が支援を受けています。
企業等による奨学金の代理返還制度利用企業数と支援者の推移

*2026年8月4日キッズドア「教育格差シンポジウムVol.4奨学金がひらく学びの未来―教育格差是正に向けた官民連携の可能性―」文部科学省高等教育局合田哲雄局長資料「日本の奨学金制度と官民連携の推進」をもとにキッズドア作成。
奨学金は大学等進学に不可欠であると同時に、その返済負担は個人や家庭の将来設計を制約しかねません。進学は子どもの可能性を広げ社会全体の利益にもつながる一方、その費用と返済のリスクを家庭だけに負わせるこれまでの仕組みは見直しが必要でなないでしょうか。給付型奨学金の拡充、奨学金返済支援策の整備など、受験段階から卒業後まで一貫した社会全体での支援拡充が求められていると思います。
2026年8月4日、キッズドアは「奨学金がひらく学びの未来 - 教育格差是正に向けた官民連携の可能性 -」と題したシンポジウムを開催しました。当日は、教育や奨学金をめぐる課題の解決に取り組む官民の関係者の皆さまに、それぞれの活動や取組についてお話しいただきました。シンポジウムについては、下記リンクからご覧いただけます。
https://kidsdoor.net/news/press/20260807.html
- キッズドア調査室マンスリーレポート バックナンバー
Vol.5 2025年国民生活基礎調査から見えてきた子どもの貧困の実態について
Vol.4 物価高騰で危機的状況の困窮子育て家庭に、この夏を生き延びるための支援を
Vol.3 生活保護家庭の子どもの高等教育進学時における世帯分離について
Vol.2 地域展開後も、全員が続けられる部活を!
Vol.1 自治体は、今すぐに夏休みの子ども支援の準備を!
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