スタッフレポート
子どもの貧困
夏休み中に痩せてしまう子ども達 —— 貧困が生む“昼食の危機”
子どもに十分な食事を与えられない、という苦しみ
『子どもに申し訳ないくらい食事の量を減らしています。水をたくさん飲んだりしてその場しのぎをして、塩むすびで空腹を満たしています。』
これは、キッズドアに寄せられた、ある家庭からの切実な声です。2024年夏にキッズドアが実施した「困窮子育て家庭アンケートレポート」(※1)では、全国から1,821件の回答が寄せられました(そのうち、約84%が世帯年収300万円未満の家庭)。
家計が以前よりも「とても厳しくなった」「やや厳しくなった」と答えた家庭は、実に98%にのぼり、依然家計は厳しい傾向にあることが分かりました。また、親子2人暮らしの困窮子育て家庭における1カ月の食費からひとりあたりの1食分の食費を算出すると、約69%がおよそ166円以下、さらに約35%がおよそ110円以下となりました。これは、おにぎり一つを買うのがやっとという金額です。

※1 ともに、キッズドア「2024夏 困窮子育て家庭アンケートレポート」をもとに作成
このように日々の食事でさえギリギリの状態の中でも特に、夏休み明けに痩せた姿で登校する子ども達がいるという報告が、教育現場や支援団体から相次いでいます。
なぜ、経済的に困窮する家庭の子どもは夏休みに痩せてしまうのでしょうか?
夏休みは子ども達の“昼食”の危機
その理由のひとつが、夏休みになると、子ども達が頼りにしていた学校給食がなくなることです。普段は学校給食が子ども達の健康を支えていますが、夏休みになるとその支えがなくなり、家庭が昼食を用意することになります。
しかし、夏休み中に給食の提供がないにもかかわらず、8月にも給食費の支払いが発生する自治体は少なくありません。これは、年間の給食費を10〜11カ月に分割して引き落とす方式を採っているためです(※地域差あり)。給食費の支払いがあるうえに、昼食代が新たにかかる――これは特に困窮家庭にとって大きな負担であり、夏休みの食事の量や質が落ちる主な要因となっています。
キッズドアのアンケートレポートでは、夏休みについて「なくてよい」「今より短い方がよい」と回答した家庭が約6割にのぼっています。その理由には、「子どもが家にいることで生活費がかかる」「給食がなくて栄養がとれない」といった声が多く寄せられました。

※1 ともに、キッズドア「2024夏 困窮子育て家庭アンケートレポート」をもとに作成
注:「子どもの学校種」で「小学校」または「中学校」を選択した人が対象
加えて、夏は猛暑が続くため、子どもが家にいる時間が増えればエアコンの使用時間も増え、電気代がかさみます。
『学校の長期休みは給食がないので、毎年恐怖です。ここ数年ものすごく暑くて、なるべくエアコンをかけたくないのですが、仕方なくつけてます。身体が一番大事なので。電気代も高いし、食費もかかるし夏休みは辛いです。』
資源エネルギー庁のデータ(※2)によれば、家庭向け電気料金の平均単価は2010年度以降上昇傾向にあり、2022年度には2010年比で約59%も値上がりしています。こうした出費の増加は、家庭の食費を削る要因となり、子どもの昼食の質と栄養に大きな影響を及ぼしているのです。

※2 資源エネルギー庁「電気料金平均単価の推移」をもとにキッズドアが作成
体重が増えない子ども達
困窮家庭の子ども達の中には、育ち盛りの時期であるにもかかわらず、成長や健康に深刻な影響が出ているケースもあります。
『食べ盛りの子どもが3人いますが、一番下の小学生が学校の内科検診で体重の減少を指摘されました。満足な量を食べさせてあげられていないので、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです』
『物価高でお米や野菜まで高くなり、おかずの量は完全に減ってしまいました。長男が急激に体重を落とし、貧血もひどくなってしまいました。お米などの食料支援が欲しいです。』
こうした声は一部ではなく、多くの経済的に困窮する子育て家庭で現実に起きていることです。実際に、キッズドアのアンケートレポートを世帯所得別に見ても、特に年収300万円未満の家庭では、子どもの健康や成長への影響が深刻化している傾向が明らかになっています。

※1 キッズドア「2024夏 困窮子育て家庭アンケートレポート」をもとに作成
子どもの健康を守るために
『お米などの食料支援が欲しい』──キッズドアには、特にお米に関する支援を求める声が多数届いています。
総務省の「消費者物価指数(全国)」(※3)によると、2024年以降もお米の価格は高止まりのままで、2025年4月の米類の指数は対2020年平均と比べて202.8ポイントに達しています。もはやすべての家庭が、お米の高騰に悩まされています。

※3 総務省「2020年基準 消費者物価指数 全国 2025年(令和7年)4月分」(2025年5月23日公表)をもとにキッズドアが作成
注:2020年の平均値を100とした際の推移
この夏も、家庭の経済状況が大きく変わらず、高騰した物価状況の下では、子ども達はまた厳しい夏休みを過ごさなければなりません。
経済的に追い詰められる家庭が存在する中で、子どもの栄養と健康をどう守るのか。夏休み中の“昼食の危機”に、どう手を差し伸べるのか。私達一人ひとりが、子どもの貧困という社会課題に目を向け、社会に声を上げ、支援の輪を広げていくことが、いま必要とされています。
どんな家庭に生まれても、夢や希望を持って、健やかに成長できる。そんな社会の実現を目指し、これからもキッズドアは活動を続けていきます。
参考データ
※1)キッズドア「2024夏 困窮子育て家庭アンケートレポート」
※2)資源エネルギー庁「電気料金平均単価の推移」
※3)総務省「2020年基準 消費者物価指数 全国 2025年(令和7年)4月分」(2025年5月23日公表)
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【子どもの社会課題レポート】
【子どもを取り巻く課題】
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