スタッフレポート
外国ルーツの子ども
教育格差
届かない学びの支援 —— 外国ルーツの子ども達を阻む“見えない壁”
学校にさえ通えない子ども達
「日本に住んでいるのに、学校に通えない子どもがいる」――。 今、そんな現実が私たちのすぐそばで起きています。
文部科学省の調査(※1)によると、小中学校に通う年齢の外国籍の子どものうち、約8,600人が学校に通っていない可能性があるとされています。これは学齢期の外国籍児童生徒全体の5.7%にあたります。
外国籍の学齢期の子ども達の5.7%が、学校教育を受ける機会すら奪われているという現状はとても深刻です。
では、なぜ学校に通えない子ども達が存在するのでしょうか。その背景には、制度の隙間に取り残されてしまうという現実があります。外国籍の子どもには就学義務が適用されないため、教育委員会が把握できていないケースも多く、必要な支援につながらないまま取り残されてしまっているのです。
教育の機会均等という理念は、現実と大きくかけ離れており、教育を受ける権利が十分に保障されていない子ども達が、今もなお存在しているのです。しかし、これはあくまで「氷山の一角」に過ぎません。
学びを阻む「見えない言語の壁」
たとえ学校に通えていても、子ども達の学びを阻む別の壁が立ちはだかっています。それが“見えない言語の壁”です。
文部科学省の調査(※2)によれば、日本語指導が必要な児童生徒は69,123人にのぼり、この10年で約2倍に急増しています。必要なサポートを十分に受けられず、学習の遅れや進学の壁に直面する子どもが少なくありません。

※2)文部科学省「日本語指導が必要な児童生徒の受け入れ状況等に関する調査(令和5年度)」を元にキッズドアが作成
「日本語が話せれば授業についていける」と考える人は少なくありません。しかし実際には、言語には2つのレベルがあります。
- 日常会話レベル(基礎的対人コミュニケーションスキル):習得には1〜2年程度
- 学習言語レベル(認知的学習言語能力):習得には5〜7年、時にはそれ以上
つまり、友達と流暢に会話ができるようになっても、教科書に出てくる抽象的な概念や論理的な説明を日本語で理解するのは極めて難しいのです。こうした「見えない困難」が、成績不振や進学の遅れへとつながっています。
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支援体制の限界:制度はあるが届かない
こうした言語の課題に対処するため、日本語指導の制度は整備されつつあります。しかし現場では十分に機能しておらず、その支援が十分に届いていません。課題は大きく3つに分けられます。
- 制度と現場のギャップ
2014年に日本語指導が「特別の教育課程」として認められたことは前進でした。しかし、「教員1人に対して児童18人という配置基準」では、実際のニーズに追いついていません。 - 専門人材の不足
人材を、短時間勤務や再任用教員に依存しているため継続的な支援が難しく、1〜2年で専門的な指導が途切れるケースが多いのが現状です。その結果、現場にノウハウが蓄積されにくい状況になっています。 - 高校教育での課題
高校においては、「特別の教育課程(日本語指導)」が正規授業時間外に設定されるため、子ども達に大きな負担となっています。十分な支援が得られないので、進学や就職に影響するケースも少なくありません。
このように、支援制度はあるものの、実際はその支援が十分に届いていない“支援の空白地帯”が存在しているのです。
学びを阻む「見えない家庭環境の壁」
子どもの教育格差は、学校だけの問題ではありません。子ども達を取り巻く家庭環境も大きな要因となっています。外国ルーツの子どもの家庭には、学びを制約する“3つの壁”が存在しています。
- 教育制度の理解不足
日本の進学制度や入試手続きは複雑で、保護者が正確に理解するのは容易ではありません。その結果、進学の機会を逃してしまう子ども達もいます。 - 情報格差と日常生活の壁
学校からの配布物や奨学金の情報は日本語のみで提供されることが多く、必要な情報にたどり着けない家庭が少なくありません。そのため、学習や進学に必要な支援を受け損ねるケースが多発しています。 - 言語ブローカー問題
日本語が不得手な保護者に代わって、子どもが学校や行政とのやり取りを担うケースも見られます。これは本来学習に充てるべき時間を削り、子どもに大きな心理的・実務的負担を与える深刻な問題です。
これらの家庭環境に起因する課題は、子ども達の学びを支えるはずの土台を不安定にし、教育格差をさらに深刻化させています。
続く格差と、社会が失う未来
このように、学校・制度・家庭の壁が重なり合うことで、外国ルーツの子ども達が直面する教育格差は世代を超えて広がっています。その影響は、彼らの未来だけにとどまらず、日本社会全体にも影響を与えます。
- 高校卒業後に就職した中での非正規雇用率は38.6%と、全体の約12倍にのぼる
- 大学進学率は46.6%にとどまり、社会で活躍できる機会が制限されている
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※2)文部科学省「日本語指導が必要な児童生徒の受け入れ状況等に関する調査(令和5年度)」を元にキッズドアが作成
さらに、十分な教育を受けられなかった親世代が安定した職に就きにくくなり、経済的困難が次世代にも連鎖しています。
本来、彼らは多言語・多文化という大きな強みを持つ存在です。この力を「支援すべき困難」ではなく、「社会を豊かにする資源」として活かす教育システムが必要ではないでしょうか。多様性を尊重する包括的な教育への転換こそが、子ども達の未来を切り開き、日本社会全体の可能性を広げる第一歩となるのです。
外国ルーツの子ども達が安心して学び、夢を描ける環境を整えること――それは私達社会全体の責任であり、未来への投資なのです。
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