子ども・保護者の声
教育格差
ひとり親世帯の貧困
「一人じゃない、頑張れば道は開ける」—— 経済的不安を乗り越え慶應義塾大学に合格 卒業生の声
※2026年春の取材内容をもとに記事にしたものです。プライバシー保護のため一部加工・編集しています。
お金の不安が、勉強より先に立っていた
僕は当初、京都大学を目指していましたが、高校2年の終わり頃に慶應義塾大学の部活動体験会へ参加し、その雰囲気の良さに惹かれて「ここに進学したい」と決意しました。
しかし受験が近づくにつれ、母から「学費は払えない」と言われ、「受験すらできないかもしれない」という不安が頭から離れなくなってしまいました。学校では、校長先生を交えた面談が行われるほど、母との話し合いは難航しました。また、周囲の友人が塾に通い勉強環境を整えていく中、自分だけが取り残されているような感覚もありました。
こうした状況の中で勉強に集中できない時期が続きましたが、受験は待ってくれません。本腰を入れて取り組めたのは12月に入ってからで、結果として合格には届かず、浪人することになりました。
一人で戦った3か月間
浪人が始まった3月から5月までの3か月間は、自宅で独学を続けていました。経済的な理由から予備校には通えず、十分な教材も揃えられませんでした。
一番つらかったのは、「どのくらい勉強すればよいのか」が分からないことでした。まるで「終わりの見えない戦い」のように感じ、自分の勉強ペースが適切かどうかを見てくれる存在の必要性を強く感じました。
短期のアルバイトは始めていたものの、最初の模試代を自分で用意できず、4月の模試だけは母に頼んで受けさせてもらいました。現役で進学できなかったこともあり、親に頼ることへの後ろめたさがありました。その後、本格的にアルバイトを始めたのは、勉強費用に加え、食費など生活に必要なお金も自分で負担したいと考えたためです。
不安の中で出会ったキッズドア下村龍馬塾
ひとりで勉強を続けることに限界を感じ始めていた頃、高校時代から生活や進路の相談に乗ってくれていた東京都の職員の方に、「キッズドア下村龍馬塾(※)という場所が西新宿にできる」と教えてもらいました。
(※低所得家庭の高校生・既卒生を対象に、難関国公立大学や私立大学への進学を支援するキッズドアの無料学習支援事業。2024年11月に神戸・垂水校、2025年6月に西新宿校を開校。以降「下村龍馬塾」)
ネットで調べてみると、自分が求めていた環境が揃っていると感じ、迷わず応募を決めました。そして、開校初日の6月1日から通い始めました。

慶應義塾大学商学部に合格したAさん(下村龍馬塾西新宿校にて撮影)
経済的な不安が消えていった
下村龍馬塾では、教材を無料で利用できるだけでなく、塾までの交通費も毎回支給されました。さらに、模試代や受験料の一部まで補助していただき、晩ごはんまで提供してもらえたのです。
僕は飲食店のアルバイトを週3〜4日入れていて、午前中に働き、まかないで昼食を済ませてから塾で勉強するという生活リズムが自然とできていきました。昼食と夕食の心配がほとんどなくなり、生活費の負担も大きく軽減されました。アルバイトは11月まで続けました。
現役時代はお金の不安を常に抱えていたため、この環境の違いは本当に大きいと感じました。
場の空気感とペースメーカーの存在
下村龍馬塾に通い始めてから、勉強面だけでなくメンタル面での不安も徐々に解消されていきました。熱意あるスタッフの方々に細かな点まで相談できたことで、現役時代とは比べものにならないほど情報量が増えました。
特に、東大や早稲田に合格した先輩方が、自身の勉強法を惜しみなく共有してくれたのが大きな助けになりました。年間目標から逆算し、月・週・日単位でやるべきことを落とし込むことで、独学時代のような「なんとなく勉強する」状態から抜け出し、進捗を可視化できるようになりました。また、塾に行くたびに進み具合を確認してもらえることで、これまで流れていくだけだった時間が、少しずつ積み重なっていく感覚を持てるようになりました。
さらに、周囲に意欲の高い仲間がいることも大きな支えでした。「今日はもういいか」と思いかけても、周りの姿を見ると「もう少し頑張ろう」と思える。その空気感が、想像以上に自分を後押ししてくれました。模試の結果が良く気が緩みかけた時期もありましたが、そうした環境が自然と自分を引き締め、最後まで走り続けることができました。ペースメーカーの存在の重要性を、強く実感しました。
奨学金が、母の不安を和らげてくれた
一方で、学費への不安はずっと残り続けていました。母が「進学後、本当に学費を払い続けられるのか」と心配していたからです。
そんな中で転機となったのが、浪人中でも受給できる奨学金を獲得できたことでした。下村龍馬塾に通い始めてから、キッズドアから奨学金の募集情報がLINEで届くようになり、職員の方に相談しながら仲間と一緒にいくつか応募しました。その結果、大きな奨学金を得ることができました。
「今これだけ奨学金を受けられているなら、これからも大丈夫かもしれないね」と、母もようやく納得してくれました。このときの安堵感は、今でも忘れられません。
現在は、国の機関による給付型奨学金を満額で受給し、不足分を貸与型奨学金で補っています。加えて、きょうだいが3人以上いる世帯向けの学費減免制度も活用しています。それでも足りない分は母に頼ることもありますが、将来は自分の力で全額返していくつもりです。
勉強だけじゃなかった。広がった「人生の視野」
下村龍馬塾では、大学生の先輩に加え、さまざまな職業の社会人ボランティアの方々が不定期で来ていました。晩ごはんを食べながら、世代を超えてざっくばらんに話せる時間も、自分にとって大きな学びでした。「社会に出るのも楽しそうだ」「人生はつらいことだけではない」と思えるようになったのは、この場所で多くの大人と出会えたからだと思います。
また、元ソニー社長の平井さんの講演に参加したり、複数の企業で活躍してきたコンサルタントの方の話を聞いたりと、他では得られない体験の機会にも恵まれました。特に、コンサルタントを志望する自分にとって、実際に働く方の話を直接聞けたことは非常に貴重な経験でした。
大学受験のために通い始めた場所でしたが、次第に「自分はこれからどう生きたいのか」を考える場にもなっていきました。これから下村龍馬塾に入る後輩には、ぜひ講演会に参加したり、ボランティアの方々に積極的に話しかけたりしてほしいと思っています。さまざまな人の話を聞く中で、進路や学部選びに迷いがあっても、自分の進みたい方向が見えてくるはずです。
慶應商学部へ。そして次の挑戦へ
僕は最終的に、慶應義塾大学商学部に合格しました。そのほかにも早稲田大学や中央大学など複数の学部に合格しましたが、ずっと目指してきた慶應に進学することを決めました。
大学では、学業と両立しながら部活動でも結果を残したいと考えています。公認会計士の勉強にも関心がありますが、まずは日商簿記やTOEIC、宅建やFPなど、短期間で取得できる資格を一つずつ着実に積み上げていく予定です。将来はコンサルティング業界を目指しているため、在学中から実践的なスキルや経験を身につけていきたいと考えています。
そして卒業後は、自分が受けた支援を次の世代へ返していきたいです。
後輩へ、そして支えてくださったすべての方へ
ご支援くださった下村さん(※)をはじめ、陰で支えてくださったすべての方々に心から感謝しています。 また、 日々の学習を支えてくれた職員やアルバイトスタッフの方々、一度しかお会いできなかった方も含め、関わってくださったすべてのボランティアの方々にも、深く感謝しています。みなさんの支えが、 自分の合格と成長につながりました。
(※株式会社チャーム・ケア・コーポレーション代表取締役会長兼CEOであり、「キッズドア下村龍馬塾」の運営費を個人資産から寄付いただいている下村隆彦さんのこと)
開校式でいただいた「一人じゃない。頑張れば道は開ける」という言葉は、今でも心に残っています。本当にその通りでした。それを実現できる場所が下村龍馬塾だったと思います。
これから挑戦する後輩達に伝えたいのは、「一人じゃない」ということです。ぜひ、下村龍馬塾を起点に一歩踏み出してほしいと思います。
【キッズドア下村龍馬塾について】
【キッズドア卒業生・在校生の声】
【その他】
- その他の「生徒・保護者の声」はこちらでご覧いただけます
https://kidsdoor.net/column?catid=12
- 「生徒の事例紹介」はこちらでご覧いただけます
https://kidsdoor.net/activity/case.html
キッズドアでは最新情報をメールマガジンで配信しています。ぜひご登録ください。















