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子どもの貧困

教育格差

生活保護を受けながら大学進学や浪人ができない子ども達 ——「世帯分離」という障壁

教育格差と家庭の経済状況

キッズドアは設立以来、子どもの成育環境によって教育の機会や質に差が生まれてしまう「教育格差」の問題に取り組んでいます。教育格差の要因は様々ですが、大きな要因の一つとされているのが、家庭の経済状況です。特に大学等への進学は、受験から入学・卒業までに多額の費用がかかるため、家庭の経済状況による影響が顕著に表れ、大きな格差が生まれるタイミングになっています。

2020年からは国の「高等教育の修学支援新制度」(※1)が始まり、多子世帯(扶養する子どもが3人以上いる世帯)等への支援拡大が進むなど、公的支援も少しずつ整いつつあります。それでもなお、経済的な苦しさを抱える家庭では、受験や進学の費用を工面することが難しく、意欲や能力があるにも関わらず、希望の進路を選ぶことができない子ども達が多くいるのが現状です。

今回は、経済的に困窮する家庭の中でも生活保護受給世帯に焦点を当て、大学等への進学に際して立ちはだかる課題について紹介していきます。

生活保護世帯の子どもの進学率

文部科学省の調査(※2)によれば、日本における大学等への進学率は上昇傾向で推移し、2024年度には87.3%と過去最高値を更新しました。一方で、こども家庭庁がまとめた資料(※3)によれば、生活保護受給世帯の大学等への進学率は上昇傾向にはあるものの、2022年度の進学率は42.4%にとどまっています。算出方法が異なるため単純な比較はできませんが、文部科学省の調査による同年度の日本全体の進学率(83.8%)と比べると、大きく下回る水準であることがわかります。


現在、生活保護受給世帯であっても、他の経済的に苦しい家庭と同様に、一定の条件を満たすことで、国の「修学支援新制度」による給付型奨学金や、入学金・授業料の減免を受けることができます。また、生活保護受給世帯を対象にした、国の「進学・就職準備給付金」や、東京都の「大学等受験料補助」など、自治体独自の支援も存在しています。


それでも、生活保護受給世帯の大学等への進学には、他の困窮家庭にはない大きな壁があります。それが「世帯分離」です。

「進学したければ家を出なさい」 ―― 最大の壁「世帯分離」とは

「世帯分離」とは、生活保護を受けている親の世帯と、大学生である子どもの世帯を制度上分け、子どもを生活保護の対象から外す措置のことです。つまり、生活保護を受けながら大学等に進学することは、原則として認められていないということを意味します。


そのため、生活保護世帯の子どもが高校卒業後に大学等に進学するには、世帯から外れて生活保護から「自立」しなければなりません。すなわち、奨学金やアルバイトなどで生活費を賄いながら、ひとりでの生活を始める必要があるのです。浪人する場合も、受験勉強に専念することは難しく、働いて収入を得ることが求められます。


こうした「世帯分離」の影響は、子ども本人だけでなく、家庭全体にも及びます。子どもが世帯から外れることで、その分の生活保護費が減額されてしまうため、家族が進学に反対したり、家族に遠慮して進学を諦めたり――といった事態が起こってしまうのです。

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働かなければ学べない今の制度

生活保護受給世帯から大学等に進学した子どもを対象とした厚生労働省の調査(※4)では、こうした実態を裏づける結果が報告されています。


調査によると、回答者の9割以上が日本学生支援機構の給付型奨学金をはじめとする奨学金を利用しています。また、約8割はアルバイトをし、そのうち約3割は自身のアルバイト収入の一部(
その金額は月平均で22,400円にのぼる)を家庭に入れています。つまり、奨学金とアルバイトは、生活保護世帯出身の学生にとって、進学後の生活に必要不可欠な手段となっているのです。


一方で、半数を超える学生が「学業とアルバイトの両立が困難」と回答しており、心身への負担の大きさもうかがえます。さらに、「出身家庭に支給される生活保護費が減額される、ということが進学するかを考える際に影響した」と答えた学生は6割を超え、制度上の制約が進学の意思決定に大きくかかわっていることが明らかになりました。


大学等への進学が一般的になっている現代において、生活保護を受けている家庭の子どもが世帯分離をせずに進学できるよう、制度の見直すべきだという声も上がっています。しかし、制度の変更は実現に至っておらず、現時点では生活保護受給世帯の子どもは進学に大きな課題を抱えたままの状態です。

希望を奪わない社会に向けて

生活保護世帯の子どもも、他の子どもたちと同じように希望する進路を選べるようにするためにはどうすればよいのでしょうか。

こうした状況を受けて、2024年には東京都世田谷区が、生活保護受給世帯から大学等に進学する子どもを対象に、学費や教材費、パソコン代、通学交通費を支給する給付型奨学金制度(※5)をスタートさせました。たとえ世帯分離が必要なままであっても、支援が拡充されることは生活保護受給世帯の子どもにとって大きな助けになります。


生活保護受給世帯の子どもの進学を後押しするために、現行制度の在り方を見直すのか、それ以外の支援を拡充するのか。家庭の経済状況にかかわらず、すべての子どもが希望の進路を選択できる社会の実現に向けて、私たち一人ひとりがこの問題に関心を持ち、声をあげることが必要です。

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